分析講座

分析講座 第35回 市場POSデータ分析:上級⑩

今回も価格弾性分析を見ていきます。

 

 

前回、自社アイテムの価格弾性のパターンを知ることが重要とお伝えしましたが、主要価格を変更すると価格弾性のパターンも変化することがあります。そのため前年同期と価格弾性を比較していくことも非常に重要な分析となります。

 

 

上記のグラフは、価格帯別の出現シェアと数量PIを前期と比較したものです。アイテムは前々回の第33回に紹介したアイテムと同じです。

 

出現シェアを前期と比較すると、前期が310~350円台が主要価格帯でしたが、当期は350~390円台に主要価格が変化しており、値上げしたことがわかります。特に390円台に価格が集中していますね。

重要なのは主要価格帯の変化によって、数量PIが変化したかという点です。結果は数量PIの折れ線グラフを比較していただくとわかるように、ほとんど変化がありませんでした。
値上げは数量PIがほとんど変わらない範囲で行われており、販売にほとんど影響がない理想に近い値上げであったことがわかります。

 

客観的なデータを小売や卸に提示できれば、値上げする際にも比較的受け入れやすくなり、値上げのフィードバックとして上記のアウトプットを見せれば、主要価格帯を400円以上に値上げすることも受け入れられる可能性が高まります。

 

ぜひ、一度自社のアイテムについて分析してみてください。
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データ出典:KSP-POS

分析講座 第34回 市場POSデータ分析:上級⑨

今回も前回に引き続き、価格弾性分析について説明していきます。

 

 

 

前回見ていただいた価格弾性分析の例のように、必ずしも価格を変えることで販売が変化するわけではありません。価格設定を検討する際には、そのアイテムの価格弾性が、どのような特徴があるのかをまず知っておくことが大切です。

 

以下は、価格弾性の代表的なパターンです。

 

価格弾性は大きく5つのパターンに分類することができます。しかし、すべてのアイテムが5つのパターンのいずれかに該当するわけではなく、5つのパターンの複合タイプも存在します。

前回紹介したアイテムの例を見ていただくと、一定の価格を下回ると販売が急激に伸びる「パターン1」に該当することがわかると思います。

 

価格弾性のパターンはカテゴリーの特徴だけでなく、そのアイテムがカテゴリー内のトップブランドかセカンドブランドかでも変わってくるため、自社アイテムの価格弾性がどのような動きになるかを知ることはとても重要です。例えば、自社アイテムが価格の変化で販売がほとんど影響しないパターン5であれば、価格の変更は比較的容易であることがわかります。

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データ出典:KSP-POS

分析講座 第33回 市場POSデータ分析:上級⑧

今回は店別日次データを活用した価格弾性分析をご紹介します。

 

 

 

上記のあるアイテムのグラフは、横軸に10円ごとの価格帯を並べ、価格帯ごとの出現シェア、数量シェア、数量PIを表したものです。出現シェアは店別日別に出現した価格を価格帯ごとにカウントし全体の出現数における価格帯別の構成比を計算したもの、数量シェアは全体の販売数量における価格帯別の数量構成比を計算したものです。

出現シェアは390円台が最も高く、次に340~370円台の出現が多いことがわかります。
一方、数量シェアに着目すると、数量シェアでも390円台が最も大きいですが、出現シェアほどの数値にはなっていません。その代わり出現が少ない230~290円台で数量シェアは高くなっており、値引き販売(店頭プロモーション)した時に大きな販売を獲得していることがわかります。

 

その価格帯別の販売状況を表したものが、折れ線グラフの数量PIです。価格帯別の数量PIを見ると、310~440円台の数量PIはほぼ横ばいで、300円台で若干高まり、270円台より安くなると一気に数量PIが跳ね上がっています。

数量PIの動きを見ると、理論的には320円台でも440円台でも販売はほとんど変化ないため、この価格幅では440円台で販売しても売上は変わらない。値引き販売する際には270円台より安くした方が大きな販売を獲得することができると言えます。

このように、価格を10円程度変えただけでは、ほとんど販売は変わらないことは、あらゆるアイテムで見られる現象ですので、感覚ではなく客観的な分析が必要となってきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第32回 市場POSデータ分析:上級⑦

今回も前回に引き続き、店別日次データによる価格分析を紹介していきます。

今回も前回扱った当期の4月に値上げした同じアイテムのデータとなっています。

 

上記のグラフは、当期4月の値上げ前と値上げ後の主要価格の金額PI推移をあらわしています。

値上げ前の主要価格である318円と338円の金額PIと、値上げ後の378年と398円の金額PIの水準を比較すると、ほぼ同水準であることがわかります。金額PIですので価格が高い分、398円の金額PIは若干高い水準となっています。

前回31回のデータでは出現回数が減っており、その点は大きな課題でしたが、値上げをして変化した主要価格のPI値は変化なく、出現回数の要素を除いた指標であるPI値の視点では値上げの影響はほぼ無いと言えます。

このように詳細な価格分析を行うことで、課題がどの点なのかをデータでしっかり把握でき、有効な次の打ち手検討につながります。

 

3回にわたって店別日次データを活用した価格トレンドの分析を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

次回以降も別視点での店別日次データを使った価格分析を紹介していきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第31回 市場POSデータ分析:上級⑥

今回も店別日次データを活用した価格分析について、前回の続きを見ていきます。

 

 

 

 

上記の2つのグラフは、上が価格帯別の販売状況、下が価格帯別の出現回数と平均価格の推移です。

 

下のグラフは、前回の出現構成比を実数で表示したもので、基本的に見方も同じですが、出現構成比ではなく出現回数で見ると、値上げ後の総出現回数が若干減少しており、一部店舗で品揃から外された可能性があります。

 

また、値上げすることで販売がどうなるのかが気になるところですが、上のグラフを見ていただくと、当期の4月以降も販売は大きく下がっていないことがわかります。
ただし、値上げ後で販売の高い週は例外なく320円以下の販売が大きくなっており、低価格販売による販売増をどのように判断していくかは、今後の課題と言えます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第30回 市場POSデータ分析:上級⑤

今回から「店別日次データ」を活用した価格分析を紹介していきます。

 

価格分析において、一般的な平均価格ではなく、店別日次データがなぜ必要なのか、という点については、前回の第29回で説明していますので、そちらをご覧ください。

 

 

上記は、黒色の折れ線グラフが一般的な平均価格、棒グラフが店別日次データによる価格帯別出現構成比の推移で
す。販売構成比ではなく、出現構成比ですので、注意してください。

このアイテムは前期の3月と当期の4月に値上げ発表があり、実際に店頭でも値上げが実施されています。当期の値上げに注目すると、値上げ後の平均価格が週により320円から360円で推移しており、週によりバラツキがありますが、価格帯出現構成比で見ると、361円以上(青色系)の構成比が増加していることがわかります。

 

平均価格だけ見ていると、値上げ後も店頭では340円から360円程度で販売されているように誤解が生じてしまいますが、実際はそうではないことが、店別日次データの積み上げによるデータではわかりますね。

 

今回は価格の出現だけ見ましたが、POSデータですので、当然販売の状況も同時に見ていく必要があります。次回は、販売の状況を見ていきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第29回 市場POSデータ分析:上級④

今回からは、より緻密な価格分析を紹介していきます。

 

 

その最初となる今回は、価格分析に入る前に、POSデータ分析で活用している「平均価格」について、理解を深めていきます。

平均価格は、販売金額÷販売数量で計算するので、上記の場合、一週間の平均価格は、販売金額55,000÷販売数量150=平均価格367円になります。

 

平均価格の計算式は知っていても、感覚的には「店頭で最も頻度の高い販売価格」と考え、367円が店頭で一番多い販売価格と勘違いすることがよくあります。

また、「367円で販売したら、1週間で150個売れる」という考え方は、367円で販売した事実自体がないので、ミスリーディングになってしまいます。

 

では、緻密な価格分析をする際にはどのようなPOSデータが必要かというと、「店別日次データ」です。上記の例で言えば、500円で販売すると10個売れ、300円で販売すると50個売れるというレベルのデータを集計する必要があります。

 

では、次回から実際に店別日次データを使った価格分析を見ていきたいと思います。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第28回 市場POSデータ分析:上級③

今回は日次データ分析を紹介していきます。

 

POSデータを分析する大きな目的の一つは、現状を把握し、必要に応じて対策を立案し、実行につなげることです。

 

特に、新商品の発売や、価格改定、大規模なプロモーションを行った時は、できるだけ早く売り上げ状況を把握することが大切です。その際には、週次データより早く結果を把握できる日次データを活用することが有効です。

上記のグラフは、前年から存在するアイテムですが、価格改定して平均価格が前年より高いレベルで推移しています。

しかし、直近になってくると平均価格の差が前年と同水準になっている日が多く、これが意図的なものでなければ、今後平均価格がどのように推移していくかは、注視していく必要があります。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第27回 市場POSデータ分析:上級②

今回も前回に引き続き、併売分析(併売店分析)を紹介していきます。

 

今回は、自社既存品とのカニバリゼーションを時系列で分析しています。

 

期間が時系列であっても、基本的に注目すべきポイントは、前回紹介した内容と同じです。しかし、新商品や期間限定品と比較する場合は、発売直後は既存品売上に影響があっても、しばらく経つとカニバリゼーションの度合いが減少するケースもありますので、時系列で分析することで誤解を防ぐことができます。

上のグラフを見ると、期間限定アイテムBとの併売店でも既存アイテムAの数量PIは落ち込んでおらず、カニバリゼーションは発生していないことがわかります。

 

期間限定品を発売しても、カニバリゼーションが発生しないことを、このような客観的データで小売店へ提示できると、期間限定品の採用率が高まることが期待できます。

 

併売分析(併売店分析)を行う注意点としては、併売していない店舗と併売店舗ともに、少なくとも10%の販売店率がある条件で比較する必要があることです。併売していない店舗が5%、併売店舗が95%の状況で比較しても、併売していない店舗のサンプル店舗数が少なすぎて、意味のある数字とは言えません。

 

 

*株式会社KSP-SPでは、本記事の併売分析(併売店分析)をスポット提供しております。ご興味のある方はお問合せください。(リンク先 https://www.ksp-sp.com/contact_us/

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第26回 市場POSデータ分析:上級①

今回から市場POSデータ分析の上級編として、通常の市場POSデータではできない分析方法を紹介していきます。

 

まず、最初に紹介するのは、併売分析です。

 

どのカテゴリーでも基本的に競合品が存在します。併売分析では、その競合品がどの程度、自社商品の売上に影響しているのかを把握することができます。また、他社商品だけでなく、自社が期間限定品などを発売することによって、既存品とのカニバリゼーションの状況を把握することも、製品戦略上、大切になってきます。

以下のグラフは、競合品の影響を分析した併売分析のアウトプットイメージです。

 

 

左の棒グラフは、自社アイテムAが品揃えされているが、競合品Bは品揃えされていない店舗、右の棒グラフは自社アイテムAと競合品Bが併売されている店舗で、数値は数量PIになっています。

 

自社アイテムAの数量PIは、競合品Bと併売していない店舗、併売店とも4.7~4.8個でほぼ同じ数値となっています。つまり競合品Bの販売の影響は、ほぼ受けていないということが言えます。商品のタイプから競合していると考えられる他社商品があっても、併売分析をしてみると、売上の影響はほとんど受けていない結果となることは良くありますので、一度分析してみてください。

 

*株式会社KSP-SPでは、本記事の併売分析(併売店分析)をスポット提供しております。ご興味のある方はお問合せください。(リンク先 https://www.ksp-sp.com/contact_us/

 

データ出典:KSP-POS