POS分析

分析講座 第25回 小売店POSデータ分析⑤

今回で、小売店POSデータ分析は最終回です。

 

小売店POSデータ分析は市場POSデータと比較して、ギャップを見つけることが基本と以前書きました。今回はアイテム分析において、小売店では販売されていない商品を提案する分析です。

 

小売店で自店では販売していないが、市場では良く売れている商品がないか、ということは常に気にしています。

 

以下は、市場POSデータのアイテムランキングで、青色のアイテムが提案する小売チェーンAでは販売されていないアイテムです。

 

市場で3位のアイテムが小売チェーンAでは販売されておらず、特別な理由がなければ、このアイテムは死筋商品に替えて、配荷すべきです。

 

小売店POSデータ分析の目的は、店舗の売上を高めるためですので、より売れる商品を品揃えすることを検討します。メーカーの立場では、自社の商品を配荷してほしいですが、自社の商品を置けば店舗の売上アップに貢献できることを、客観的に提案していくことが大切です。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第24回 小売店POSデータ分析④

今回も引き続き、アイテム分析の方法を見ていきます。

 

小売店POSデータと市場POSデータの最も違う点の1つは、小売店POSデータでは、店舗別のデータまで見ることができることです。

 

前回は、1店舗あたりの売上が高いのに、全店舗で配荷されていない状況を見ました。
その際は、店舗別にデータを見て、具体的にどの店舗では配荷されていないのかをチェックすることで、「〇〇店と〇〇店ではこの商品が現在販売されていないですが、この商品は置けば他の商品より売れることがデータから明確です。」と提案することができますね。

 

 

資料に今後配荷すべき店舗が書いていれば、小売店のバイヤーも提案内容を忘れずに、実行してもらえる確率が高まります。

 

次回は小売店POSデータ分析の最終回として、アイテム分析のもう一つのパターンをご紹介します。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第23回 小売店POSデータ分析③

今回は、前回の分析の続きで、小売店POSデータのアイテム分析のアウトプットをご紹介します。

 

以下はチェーンAのコーヒー飲料のアイテムランキングTOP15です。

 

売上上位アイテムのほとんどが前期比プラスですが、7位と13位のアイテムだけが前期比マイナスになっています。この2つのアイテムについて、右から2つ目の指標である「実績店数」に注目してください。チェーンAは50店舗を展開していますが、上位アイテムのほとんどが45店舗以上で販売されています。

 

ただし、アイテム7とアイテム13は30店舗前後でしか実績がありません。
さらに注目すべきは、一番右の指標である金額/店です。アイテム7と13の1店舗あたりの金額は、5位以下のアイテムより高い数値になっている、つまり、販売すれば他の上位アイテムより売れるということができます。

 

もし、メーカーが小売店に提案する際、自社商品がアイテム7や13のように、1店舗あたりの売上は高いのに全店舗で配荷されていない状況であれば、自信を持って小売店に品揃えを提案することができますね。

 

 

次回も小売店POSデータのアイテム分析の方法を見ていきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第22回 小売店POSデータ分析②

では、前回の続きで、カテゴリー分析のデータを見ていきましょう。

 

注目すべきデータ指標は、構成比と前期比です。
まず飲料合計の前期比を見ると、チェーンAが98.4%に対し、市場は91.9%と両方ともマイナスになっていますが、チェーンAの落ち幅は市場より小さいので、前期比マイナスであっても悪くない状況です。

 

 

次に構成比に注目すると、炭酸飲料とコーヒー飲料が売上のほとんどを占めていることがわかります。チェーンAは市場の構成比より炭酸飲料が高く、コーヒー飲料は低くなっています。

 

カテゴリー別の前期比を見ると、チェーンAの炭酸飲料が107.4%と大きく伸びており、コーヒー飲料も93.7%と市場の前期比より良い状況でした。

 

今回の事例では、チェーンAは市場の状況より良いため、改善すべきところは基本的にありませんが、炭酸飲料が大きく伸びていたので、コーヒー飲料ももう少し伸ばせる余地があったかもしれませんね。

 

次回はこの続きで、アイテム別の分析を見ていきます。

 

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第21回 小売店POSデータ分析①

今回から小売店POSデータの分析方法を説明していきます。

 

小売店POSデータ分析のポイントは、市場POSデータと比較して、そのギャップを発見していくことです。分析の流れは市場POSデータ分析と同じで、
①カテゴリー→②メーカー→③アイテム
この流れで見ていきます。

 

ただし、小売店POSデータを分析する目的は、その小売店の売上を高めることが目的になりますので、②メーカー別の分析は必要ありません。メーカーからすると自社の売上を高めることが目的にはなりますが、「当社のシェアが低いので、もっと当社の商品を品揃えしてください。」と提案しても、小売店からすれば「うちの売上が上がらない商品をなぜ品揃えしなければいけないのか。」と言うのは当然ですね。②メーカー別の分析は、あくまでメーカーが「その小売店で自社はどのような状況にあるか」を知るために行うものです。

 

では、カテゴリー分析のアウトプットを見ていきましょう。

以下は、ある小売チェーンAの飲料カテゴリー別の販売金額と市場POSデータの状況を比較したものです。

 

こちらのデータの見方は、次回詳しく見ていきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第20回 市場POSデータ分析:中級⑥

今回は、移動平均によるアウトプットをご紹介します。

新型コロナウイルスのまん延により、月次や週次のトレンドでデータを分析する機会が以前よりも増えています。ただし、月次や週次トレンド等では季節要因が入るため、以下の例のようにグラフ化しても、販売が伸びているのか落ちているのかよくわからないですね。

 

 

その際に使えるのが移動平均を使った指標です。移動平均とは期間合計の平均値を毎月(毎週)ずらしながら、計算していく方法です。

 

以下のアウトプットは12か月の移動平均です。一番左の2019年12月は2019年1月-12月計、一つ右の2020年1月は19年2月-20年1月計と、毎月合計期間をずらしていきます。そうすることで、季節要因の影響を除去できるため、市場のトレンドがわかりやすくなります。コロナ後から巣ごもり需要で伸び、その1年後の2021年から徐々に減少していることがわかりますね。
移動平均の合計期間は12か月にすることが多いですが、6か月合計など別の期間にしても問題ありません。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第19回 市場POSデータ分析:中級⑤

今回も1店舗あたりの平均扱いアイテム数について、見ていきましょう。
1店舗あたりの平均扱いアイテム数の公式は、「該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷100%」でしたね。

 

 

では、この指標を期間合計で計算する場合は、どうしたら良いでしょう?

期間合計で算出する場合も計算は簡単です。「期間別の該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷(100%×期間数)」で計算するだけで算出できます。

例えば、2022年3-8月のカレー・シチューカテゴリーの1店舗あたりの平均扱いアイテム数を月次データから計算するは、「2022年3月から8月の月別販売店率の合計÷600%(100%×6か月)」となります。

前年同期と比較したアウトプットイメージです。

 

 

カレールー・カレー粉が56.7から55.7アイテムの1アイテム減、調理済みカレーが94.6から93.1の1.5アイテム減が、合計の扱いアイテム数の減少につながっていることがわかります。

 

あまり知られていない指標ですが、いかがだったでしょうか。

次回は、中級編の最後として、別のデータ指標を紹介します。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第18回 市場POSデータ分析:中級④

前回ご紹介した、1店舗あたりの平均扱いアイテム数の計算方法の根拠を説明していきます。

 

今回は、「計算式の意味がわからないと気持ち悪い!」と思う方向けの説明ですので、指標を活用するだけであれば、「該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷100%」を覚えておけば大丈夫です。

では、以下の例で考えてみましょう。

 

 

店舗X・Y・Zともに2アイテム品揃えしていますので、1店舗あたりの平均扱いアイテム数は、2アイテムと計算しなくてもわかると思います。計算式にすると(店舗Z:2アイテム+店舗Y:2アイテム+店舗Z:2アイテム=6アイテム)÷3店舗=2となります。

 

この例のアイテムA・B・Cの販売店率を計算すると、アイテムAはX・Y・Zの3店舗で扱いがあるので100%、アイテムBはXの1店舗なので33.3%、アイテムCはY・Zの2店舗ですので66.7%ですね。

 

1店舗あたりの平均扱いアイテム数は公式にあてはめると、当然「2アイテム」になります。

(100%+33.3%+66.7%)÷100%=2.0

(3/3+1/3+2/3)÷3=2.0

 

公式の「該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷100%」の分子にあたる「販売店率の合計」というのは、表の「〇」の数を合計していることと同じで、分母にあたる「100%」は店舗数で割っているだけ、ということになります。
「ちょっとわからない。」という方も、あまり気にせず、公式に当てはめて、この指標を活用してみてください。

 

次回も1店舗あたりの平均扱いアイテム数について、応用的な使い方を紹介していきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第17回 市場POSデータ分析:中級③

今回は、1店舗あたりの平均扱いアイテム数という指標の説明をしていきます。

 

あまり知られていない指標ですが、市場POSデータで算出することができ、小売りへの棚割り提案にも活用できる指標です。1店舗あたりの平均扱いアイテム数は、名前のとおり、該当カテゴリーが小売り1店舗で平均何アイテム品揃えされているのかがわかる指標です。

 

 

上記から、2022年10月カレー・シチュー関連カテゴリーは1店舗あたり平均約170アイテムが品揃えされていますが、前年と比較すると約5アイテム減少しています。カテゴリー別に見ると、5アイテムの減少は調理済みカレーの影響であることがわかりますね。

 

では、1店舗あたりの平均扱いアイテム数の指標はどうやって計算するのかというと、下記で算出できます。

該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷100% 

 

あるカテゴリーでは、3アイテムしか存在しておらず、それぞれのアイテムの販売店率が

アイテムA:100%、アイテムB:50%、アイテムC:50%

だとすると、(100%+50%+50%)÷100%=2.0で、平均扱いアイテム数は2アイテムということになります。

 

計算自体は、全アイテムの販売店率を合計すれば良いだけなので、比較的簡単に計算できると思いますが、なぜこの計算で扱いアイテム数がわかるのか疑問に思う方もいらっしゃると思いますので、次回はこの計算の仕組みについて、説明してきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第16回 市場POSデータ分析:中級②

前回は、PI値とは配荷店の販売力の要因をできるだけ除去したデータ指標であることを伝え、終了しましたので、その続きを説明していきます。

 

以下のような状況の場合、数量PI値はいくつになるでしょうか。

 

 

PI値は、販売÷客数×1,000で計算しますので、

アイテムA=500個÷5,000人×1,000=100

アイテムB=1,000個÷50,000人×1,000=20

となりますね。

 

 

客数の条件を1,000人で合わせることにより、小売りの販売力の影響を除いた数値を算出することができます。
この例であれば、アイテムBよりアイテムAの方が品揃えすればよく売れる商品である、と言うことができますね。

 

上記の例は少し極端でしたので、現実的には1店舗あたりの販売とPI値で大きく変わるケースは多くありません。ですので、「絶対に1店舗あたりの販売よりPI値を使った方が良い」とまでは言えません。むしろ、1店舗あたりの販売のほうが具体的にイメージしやすいので、この指標を使うのが一般的です。

 

小売店などで、PI値を求められた場合は、PI値の内容を理解したうえで利用しましょう。

 

次回は、別のデータ指標を紹介します。

 

データ出典:KSP-POS