市場POSデータ

ワード解説 市場POSデータ

市場POSデータとは、複数の小売りチェーンからPOSデータを収集し合算したデータを指します。店頭での販売の実態を把握できるので、食品トレンドの理解やメーカーマーケティングなどに活用いただけます。最も活用されているのは、食品スーパーマーケットの市場データです。

市場データを提供している会社は複数ありますが、各社独自に小売りチェーンからPOSデータを収集しているため、データに多少違いがあります。

 

市場POSデータで主にわかること

  • どのメーカーの何のアイテム(SKU)が売れているのか
  • 商品ごとに、どのくらいの支持差(購入差)があるのか
  • どのカテゴリーへの関心が高い(売れている)のか
  • エリアによって生活者の反応(購入)に差があるのか
  • 値下げでどのくらい売れるのか
  • いつ・いくらで購入されているのか など

 

もともとのPOSデータは店舗別ですが、市場POSデータは合算データですので、店舗別データを見ることはできません。市場POSデータの粒度は下記の通りです。

 

KSP-POSの例

商品軸:商品(SKU)別→メーカー別・カテゴリー別

時間軸:日次→週次(月曜~日曜)→月次→年次(1月~12月)

場所軸:都道府県別→エリア別→全国

店舗軸:店舗面積別→業態別(食品スーパーマーケット、ドラッグストア)

*KSP-POSとは、株式会社KSP-SPが提供する市場POSデータの名称。詳細はこちら。

分析講座 第3回 市場POSデータ分析:初級②

今回は、前回紹介したグラフをもとに、データの見方について説明していきます。

 

データを見る際、増減率(伸び率)を見る場合は構成比とセットで分析することが大切であることを知っておいてください。

右のグラフの数値を見ると、嗜好飲料合計は97.0%と前期比(比較期間比)マイナスになっています。では、嗜好飲料のマイナスに寄与してしまったカテゴリーは何かと考えると、増減率(伸び率)だけを見ると、ココア90.8%、麦茶93.8%で減少率が大きくなっているため、ココアと麦茶の不調によって、嗜好飲料市場は落ち込んだと思ってしまいます。

 

しかし、このデータの見方は誤りですね。左のグラフの金額構成比を見ると、ココアと麦茶は嗜好飲料の中で非常に小さなカテゴリーであることがわかります。そのため、ココアと麦茶は増減率が小さくても嗜好飲料全体への影響は大きくありません。

 

嗜好飲料の中では、インスタントコーヒー、レギュラーコーヒー、日本茶の金額構成比が高いため、これらのカテゴリーが嗜好飲料全体の増減率への影響度が高くなります。増減率はインスタントコーヒーが96.4%、日本茶が95.7%となっており、この2つのカテゴリーによって、嗜好飲料がマイナスになったことがわかります。

 

このように増減率だけ見ていると、ミスリードすることがよくありますので、注意しましょう。

 

次回は、今回の次のステップとして行う分析を紹介していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第2回 市場POSデータ分析:初級①

今回から、市場POSデータを活用した分析の基本を説明していきます。

まず、POSデータ分析の基本は以下の2つです。

①数字そのものよりも、比較することで違いに着目する。

②大きいものから小さいものへ落とし込んでいく。

 

まず、「①数字そのものよりも、比較することで違いに着目する。」を見ていきましょう。比較する項目は様々ありますが、最も多いのは期間の比較です。「前期比5%アップした」という表現は、記事などでもよく目にしますね。

次に、競合との比較も多いですね。競合とは、競合商品のことだけでなく、カテゴリーやメーカーなど様々あります。

以下はアウトプットイメージです。

 

 

左のグラフは、カテゴリー別の販売金額の大きさを比較したものです。メーカーやアイテム比較では割合を「シェア」というのが一般的ですが、カテゴリーの割合は「構成比」というのが一般的です。

 

右のグラフは、販売金額の増減率です。100%を基準として、100%を超えていれば比較期間より伸びている、100%未満であれば比較期間より落ち込んでいることになります。

 

次回は、こちらの2つのグラフの見方について、もう少し詳しく説明していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第1回 POSデータとは

POSデータ分析について、具体的な方法を紹介する前に、今回はPOSデータの種類について、整理したいと思います。

 

まず、大前提としてPOSデータとはPoint of Salesの略で、小売店の販売データのことです。メーカーや卸の出荷データとは、以下の違いがあります。

①出荷と販売ではタイムラグがあるので、出荷データとPOSデータの推移は、必ずしも同じになるとは言えません。

②基本的に、メーカーの出荷データは自社商品のみ、卸の出荷データは自社が取引している商品のみのデータです。一方、POSデータは競合商品を含めた販売されているすべての商品のデータを見ることができます。

③POSデータは、販売金額・販売数量だけでなく、平均価格など様々なデータ指標があるため、販売が伸びた・落ちたという結果の確認だけでなく、販売増減の要因を分析することができます。

 

POSデータは、大きく2種類に分けることができます。

 ①市場POSデータ
株式会社KSP-SPなどが提供している市場データサービスです。複数の小売りチェーンからPOSデータを収集し、合算することで市場全体の動向を全国だけでなく、エリア別に見ることができます。

 ②小売チェーンPOSデータ
各小売チェーンが自社のPOSデータを取引先メーカーや卸に提供しています。ほとんどの小売チェーンのPOSデータは、店舗別の販売データも見ることができます。

 

次回からは、市場POSデータの分析方法について、説明していきます。