カテゴリー分析

分析講座 第22回 小売店POSデータ分析②

では、前回の続きで、カテゴリー分析のデータを見ていきましょう。

 

注目すべきデータ指標は、構成比と前期比です。
まず飲料合計の前期比を見ると、チェーンAが98.4%に対し、市場は91.9%と両方ともマイナスになっていますが、チェーンAの落ち幅は市場より小さいので、前期比マイナスであっても悪くない状況です。

 

 

次に構成比に注目すると、炭酸飲料とコーヒー飲料が売上のほとんどを占めていることがわかります。チェーンAは市場の構成比より炭酸飲料が高く、コーヒー飲料は低くなっています。

 

カテゴリー別の前期比を見ると、チェーンAの炭酸飲料が107.4%と大きく伸びており、コーヒー飲料も93.7%と市場の前期比より良い状況でした。

 

今回の事例では、チェーンAは市場の状況より良いため、改善すべきところは基本的にありませんが、炭酸飲料が大きく伸びていたので、コーヒー飲料ももう少し伸ばせる余地があったかもしれませんね。

 

次回はこの続きで、アイテム別の分析を見ていきます。

 

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第21回 小売店POSデータ分析①

今回から小売店POSデータの分析方法を説明していきます。

 

小売店POSデータ分析のポイントは、市場POSデータと比較して、そのギャップを発見していくことです。分析の流れは市場POSデータ分析と同じで、
①カテゴリー→②メーカー→③アイテム
この流れで見ていきます。

 

ただし、小売店POSデータを分析する目的は、その小売店の売上を高めることが目的になりますので、②メーカー別の分析は必要ありません。メーカーからすると自社の売上を高めることが目的にはなりますが、「当社のシェアが低いので、もっと当社の商品を品揃えしてください。」と提案しても、小売店からすれば「うちの売上が上がらない商品をなぜ品揃えしなければいけないのか。」と言うのは当然ですね。②メーカー別の分析は、あくまでメーカーが「その小売店で自社はどのような状況にあるか」を知るために行うものです。

 

では、カテゴリー分析のアウトプットを見ていきましょう。

以下は、ある小売チェーンAの飲料カテゴリー別の販売金額と市場POSデータの状況を比較したものです。

 

こちらのデータの見方は、次回詳しく見ていきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第4回 市場POSデータ分析:初級③

今回は、第2回と第3回で紹介したカテゴリー分析の次のステップについて紹介します。

第2回で説明しましたが、POSデータ分析の基本は以下の2つです。

①数字そのものよりも、比較することで違いに着目する。

②大きいものから小さいものへ落とし込んでいく。

 

第2回と第3回では、嗜好飲料という大きなカテゴリーを②の小さなカテゴリーに落とし込み、①のカテゴリー別の大きさの比較(金額構成比)と期間の比較(増減率)をすることで違いに着目しました。

次は②さらに小さいものへ落とし込むことをしていきます。

 

上の2つのグラフは、日本茶カテゴリーのサブカテゴリー別販売金額構成比と増減率です。日本茶カテゴリーの中では、リーフ日本茶の金額構成比が50%を超えており最も大きい一方、増減率は94.3%で最も落ち込みが大きくなっています。どのサブカテゴリーの伸び率もマイナスですが、リーフ日本茶の落ち込みが最も大きく、日本茶カテゴリーのマイナスに最も大きく影響していることがわかります。

 

なお、カテゴリーやサブカテゴリーの分類方法は、統一された分類はなく、同じカテゴリーの企業でも分類の考え方は異なります。サブカテゴリー別に分けるだけでなく、容器別や容量別など分類の仕方は様々ですので、基本的には自社が定義している分類や契約しているデータに付属している分類を活用することが一般的です。

 

次回はさらに小さいものへ落とし込んで、データを見ていきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第3回 市場POSデータ分析:初級②

今回は、前回紹介したグラフをもとに、データの見方について説明していきます。

 

データを見る際、増減率(伸び率)を見る場合は構成比とセットで分析することが大切であることを知っておいてください。

右のグラフの数値を見ると、嗜好飲料合計は97.0%と前期比(比較期間比)マイナスになっています。では、嗜好飲料のマイナスに寄与してしまったカテゴリーは何かと考えると、増減率(伸び率)だけを見ると、ココア90.8%、麦茶93.8%で減少率が大きくなっているため、ココアと麦茶の不調によって、嗜好飲料市場は落ち込んだと思ってしまいます。

 

しかし、このデータの見方は誤りですね。左のグラフの金額構成比を見ると、ココアと麦茶は嗜好飲料の中で非常に小さなカテゴリーであることがわかります。そのため、ココアと麦茶は増減率が小さくても嗜好飲料全体への影響は大きくありません。

 

嗜好飲料の中では、インスタントコーヒー、レギュラーコーヒー、日本茶の金額構成比が高いため、これらのカテゴリーが嗜好飲料全体の増減率への影響度が高くなります。増減率はインスタントコーヒーが96.4%、日本茶が95.7%となっており、この2つのカテゴリーによって、嗜好飲料がマイナスになったことがわかります。

 

このように増減率だけ見ていると、ミスリードすることがよくありますので、注意しましょう。

 

次回は、今回の次のステップとして行う分析を紹介していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第2回 市場POSデータ分析:初級①

今回から、市場POSデータを活用した分析の基本を説明していきます。

まず、POSデータ分析の基本は以下の2つです。

①数字そのものよりも、比較することで違いに着目する。

②大きいものから小さいものへ落とし込んでいく。

 

まず、「①数字そのものよりも、比較することで違いに着目する。」を見ていきましょう。比較する項目は様々ありますが、最も多いのは期間の比較です。「前期比5%アップした」という表現は、記事などでもよく目にしますね。

次に、競合との比較も多いですね。競合とは、競合商品のことだけでなく、カテゴリーやメーカーなど様々あります。

以下はアウトプットイメージです。

 

 

左のグラフは、カテゴリー別の販売金額の大きさを比較したものです。メーカーやアイテム比較では割合を「シェア」というのが一般的ですが、カテゴリーの割合は「構成比」というのが一般的です。

 

右のグラフは、販売金額の増減率です。100%を基準として、100%を超えていれば比較期間より伸びている、100%未満であれば比較期間より落ち込んでいることになります。

 

次回は、こちらの2つのグラフの見方について、もう少し詳しく説明していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS