2022年 10月 の投稿一覧

分析講座 第6回 市場POSデータ分析:初級⑤

今回は、アイテム分析を紹介します。

カテゴリー分析からの流れでアイテム分析をする場合は、アイテムランキングで上位アイテムの動向を知ることが一般的です。

 

 

リーフ日本茶販売金額アイテムランキング 全国
20年4月-21年3月vs 21年4月-22年3月

 

データ指標は左から、販売金額増減率、金額シェア、販売店率、1店舗あたりの販売数量(個数)、平均価格です。販売店率と1店舗あたりの販売数量(個数)は、次回以降説明していきます。

上の表では、販売金額は増減率だけ表示し、販売金額の数字は表示していませんが、もちろん販売金額を表示することは問題ありません。ただし、サンプル調査である市場POSデータの販売金額は、当然、実際の市場の販売金額(市場規模)とは異なりますので、数字自体に意味はありません。増減率など比較することで意味のある数字になってくるため、販売金額は非表示にしています。

ランキング5位や7位、11位のアイテムの増減率が1,000パーセント代の数値になっており、非常に売上が伸びていると思ったかもしれませんが、これらのアイテムは前期の途中に発売された新製品です。POSデータはJANコードでアイテムを管理していますので、リニューアル品も新しいJANコードになれば、新製品扱いになりますので、データを見る際は注意する必要があります。

 

次回、このアイテムランキングのデータを分析していきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第5回 市場POSデータ分析:初級④

今回はメーカー別の分析を紹介します。自社がメーカーであれば、自社と競合の関係を把握するうえで、重要になってきます。しかし、卸売業や小売業にとっては、必ずしも必要な切り口ではありません。ですので、メーカーが小売業への提案にデータを紹介する場合は資料として含めないのが一般的です。

 

 

メーカー別分析も今まで見てきたアウトプットイメージと基本的に同じです。第2回で説明したように、カテゴリー別の割合は「構成比」と表現するのに対して、メーカー別やアイテム別の割合は「シェア」と表現します。

 

 

リーフ日本茶のメーカーは地域密着の企業が多いため、全国的に展開している企業は1社のみです。その大手メーカーAは金額シェアが23.3%で、比較期間の22.3%より1ポイント伸ばしています。加えて金額増減率は若干のマイナスながらも、上位メーカーの中で最も小さい下げ幅となっていました。リーフ日本茶の落ち込みは、2位メーカー以下の影響が大きいことがわかります。

 

構成比やシェアの比較期間差(前期差)は「〇〇%伸びた」と言わずに、「〇〇ポイント伸びた」と言いますので、覚えておいてください。

 

次回はさらに小さく落とし込み、アイテム別分析を紹介していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第4回 市場POSデータ分析:初級③

今回は、第2回と第3回で紹介したカテゴリー分析の次のステップについて紹介します。

第2回で説明しましたが、POSデータ分析の基本は以下の2つです。

①数字そのものよりも、比較することで違いに着目する。

②大きいものから小さいものへ落とし込んでいく。

 

第2回と第3回では、嗜好飲料という大きなカテゴリーを②の小さなカテゴリーに落とし込み、①のカテゴリー別の大きさの比較(金額構成比)と期間の比較(増減率)をすることで違いに着目しました。

次は②さらに小さいものへ落とし込むことをしていきます。

 

上の2つのグラフは、日本茶カテゴリーのサブカテゴリー別販売金額構成比と増減率です。日本茶カテゴリーの中では、リーフ日本茶の金額構成比が50%を超えており最も大きい一方、増減率は94.3%で最も落ち込みが大きくなっています。どのサブカテゴリーの伸び率もマイナスですが、リーフ日本茶の落ち込みが最も大きく、日本茶カテゴリーのマイナスに最も大きく影響していることがわかります。

 

なお、カテゴリーやサブカテゴリーの分類方法は、統一された分類はなく、同じカテゴリーの企業でも分類の考え方は異なります。サブカテゴリー別に分けるだけでなく、容器別や容量別など分類の仕方は様々ですので、基本的には自社が定義している分類や契約しているデータに付属している分類を活用することが一般的です。

 

次回はさらに小さいものへ落とし込んで、データを見ていきます。

 

データ出典:KSP-POS

ワード解説 エリア別POSデータ

もともとのPOSデータは店舗別ですが、市場POSデータは合算データですので、店舗別データを見ることはできません。店舗の所在地で集計したデータを公開しています。

KSP-POSでは、場所軸として3種類のデータを提供しています。

 

KSP-POSの例

都道府県別:40都道府県別データを提供(2022年9月現在)

エリア別:全国を10エリアに区分し提供(詳細下記参照)

全国:収集している全店舗データを合算して提供(2022年9月現在1048店舗)

 

KSP-POSのエリア設定

  • 北海道
  • 東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
  • 北関東(茨城、栃木、群馬、山梨)
  • 首都圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)
  • 北陸(新潟、富山、石川、福井、長野)
  • 東海(岐阜、静岡、愛知、三重)
  • 近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
  • 中国(鳥取、島根、岡山、広島、山口)
  • 四国(徳島、香川、愛媛、高知)
  • 九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島)

 

*KSP-POSでは、上記エリア設定の他にカスタマイズ設定もできます。

ワード解説 KSP-POS

株式会社KSP-SPが提供する市場POSデータです。「KSP-POS」は食品スーパーマーケット(食品、日用品)と、ドラッグストア(食品)を提供しています。

多くの食品卸売業で利用され、業界のスタンダードデータになっています。

食品卸売業、メーカー(食品メーカー、原材料メーカーなど)、専門誌(食糧新聞社、ダイヤモンド・チェーンストアなど)を含め、約200社以上に日々データを活用いただいております。その他、官公庁や各種研究機関などにもデータを提供しております。

 

KSP-POSで提供しているデータの内容

  • 商品(SKU)単位の販売動向
  • 都道府県別、エリア別の動向
  • メーカー別の動向
  • カテゴリー別の動向
  • 年次、月次、週次、日次の動向

 

 

KSP-POSで提供している主な指標

  • 金額関連指標:販売金額、金額構成比、金額/店、金額/販売店千人、金額/全店千人 など
  • 数量関連指標:販売数量、数量構成比、数量/店、数量/販売店千人、数量/全店千人、週販数量/販売店 など
  • 価格関連指標:平均価格、平均価格中央値、最頻平均価格 など
  • 販売店率(配荷率、カバー率)関連:販売店率、加重販売店率
  • アイテム数関連:アイテム数、アイテム数ABC、メーカー数 など
  • その他:客数関連指標、販売店舗関連指標 など

 

KSP-POSで提供しているカテゴリー分類
●KSP標準分類

  • KSP商品分類

 

KSP-POSで提供しているデータ期間(食品スーパーマーケット)

  • 年次:2003年~
  • 月次:2002年4月~
  • 週次:2006年第1週~

*週次データは月曜~日曜で集計。1月第1月曜日の週を第1週とカウント。

 

KSP-POSの提供方法

  • 月額定額のクラウドサービス
  • スポットでのデータ提供

 

なお、一部の企業様へはデータ提供をお断りする場合がございますので、ご了承ください。個人の方へはデータは提供しておりません。学生の方の研究向けに、一定範囲のデータを無償で提供しております。詳しくはお問合せください。

 

*価格関連指標は税抜きです。

ワード解説 市場POSデータ

市場POSデータとは、複数の小売りチェーンからPOSデータを収集し合算したデータを指します。店頭での販売の実態を把握できるので、食品トレンドの理解やメーカーマーケティングなどに活用いただけます。最も活用されているのは、食品スーパーマーケットの市場データです。

市場データを提供している会社は複数ありますが、各社独自に小売りチェーンからPOSデータを収集しているため、データに多少違いがあります。

 

市場POSデータで主にわかること

  • どのメーカーの何のアイテム(SKU)が売れているのか
  • 商品ごとに、どのくらいの支持差(購入差)があるのか
  • どのカテゴリーへの関心が高い(売れている)のか
  • エリアによって生活者の反応(購入)に差があるのか
  • 値下げでどのくらい売れるのか
  • いつ・いくらで購入されているのか など

 

もともとのPOSデータは店舗別ですが、市場POSデータは合算データですので、店舗別データを見ることはできません。市場POSデータの粒度は下記の通りです。

 

KSP-POSの例

商品軸:商品(SKU)別→メーカー別・カテゴリー別

時間軸:日次→週次(月曜~日曜)→月次→年次(1月~12月)

場所軸:都道府県別→エリア別→全国

店舗軸:店舗面積別→業態別(食品スーパーマーケット、ドラッグストア)

*KSP-POSとは、株式会社KSP-SPが提供する市場POSデータの名称。詳細はこちら。

ワード解説 POSデータ(ポスデータ)

POSデータはPoint of Salesの略で、日本語では販売時点情報管理となります。

レジで商品のバーコードをスキャナーなどで読み取ることで、商品情報が登録されます。野菜などバーコードがない商品は、タッチパネルやレジのキーボードなどで販売情報を登録し情報が蓄積されます。お会計をセルフレジで行うと、データ収集の流れがわかりやすいと思います。

つまり、POSデータは【商品の売上実績データ】ですが、言い換えると【お客様と商品が出会う店頭における自社と競争企業の動きと、お客様の心の動きを反映したデータ】とも言えます。この意味では、見ることができないお客様の購買行動を把握するための重要な手段であり、<宝の山>と言われています。

特に食品は、お客様が何を購入するかの約80%を店頭で決めていると言われていますので、店頭でのお客様の購買行動を把握することは極めて重要です。

 

レジに関連したデータとしてはレシートデータがありますが、POSデータとレシートデータはデータの中身が異なります。(以下は一例)

 

レシートデータは購入者情報などがわかる点が強みですが、データ量は圧倒的にPOSデータが優位です。POSデータを大きなトレンドを理解する基準データとして活用し、そこでの“気づき”をレシートデータ等で詳細に把握する流れが適切です。

両方の特性を把握し、使い分けすることでデータ活用が深化します。

分析講座 第3回 市場POSデータ分析:初級②

今回は、前回紹介したグラフをもとに、データの見方について説明していきます。

 

データを見る際、増減率(伸び率)を見る場合は構成比とセットで分析することが大切であることを知っておいてください。

右のグラフの数値を見ると、嗜好飲料合計は97.0%と前期比(比較期間比)マイナスになっています。では、嗜好飲料のマイナスに寄与してしまったカテゴリーは何かと考えると、増減率(伸び率)だけを見ると、ココア90.8%、麦茶93.8%で減少率が大きくなっているため、ココアと麦茶の不調によって、嗜好飲料市場は落ち込んだと思ってしまいます。

 

しかし、このデータの見方は誤りですね。左のグラフの金額構成比を見ると、ココアと麦茶は嗜好飲料の中で非常に小さなカテゴリーであることがわかります。そのため、ココアと麦茶は増減率が小さくても嗜好飲料全体への影響は大きくありません。

 

嗜好飲料の中では、インスタントコーヒー、レギュラーコーヒー、日本茶の金額構成比が高いため、これらのカテゴリーが嗜好飲料全体の増減率への影響度が高くなります。増減率はインスタントコーヒーが96.4%、日本茶が95.7%となっており、この2つのカテゴリーによって、嗜好飲料がマイナスになったことがわかります。

 

このように増減率だけ見ていると、ミスリードすることがよくありますので、注意しましょう。

 

次回は、今回の次のステップとして行う分析を紹介していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS