販売金額の要因分析

分析講座 第12回 市場POSデータ分析:初級⑪

前回に引き続き、今回もトレンド分析の方法を紹介していきます。

 

前回は月次のトレンド分析でしたが、より細かな動きを見る場合は、週次でトレンドを見ていきます。特に新商品発売時は、販売の推移を見るだけでなく、以前に紹介した販売店率・1店あたりの販売個数・平均価格に分けることにより、課題が発見しやすくなります。

 

 

以下は、2022年2月に発売されたある新商品の推移です(2月7日週は一部店舗で先行販売)。

 

 

販売店率は発売週から70%を超え、4月には80%近くになり、順調に配荷が進んでいることがわかります。

1店あたり販売数量は発売週が80個近くになり、その週の平均価格が低くなっていることから、発売時に多くの店舗でプロモーションを実施したことが考えられます。平均価格は4月から下がってきていますが、週販(数量/店)は20~30個で安定しており、価格を下げても販売増にはつながっていないため、販売価格の設定が今後の課題と考えられます。

 

 

今回は新商品の1アイテムのみでPOSデータを見ましたが、競合商品と比較して分析するとさらに発見があります。

 

 

次回も週次のトレンド分析を紹介していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第10回 市場POSデータ分析:初級⑨

今回は、第8回と第9回で紹介した、販売店率、1店あたりの販売数量、平均価格の3つの指標を実際のデータを使って見てみます。

 

 

 

 

まず、7位のアイテムGを見てください。アイテムGは平均価格が他のアイテムより高い設定になっています。基本的に価格が高いと、販売数量は安いアイテムより低くなることが一般的ですので、その際は金額/店の数値で比較すべきです。金額/店で見ると5位と6位のアイテムより高いので、販売店率を高めることによって、さらに売上を伸ばす余地がありそうです。

 

次に、3位のアイテムCと4位のアイテムDに注目してください。当期の金額シェアは、0.6ポイントの差がありますが、数量/店の数値はアイテムDの方が高いです。平均価格はアイテムDの方が若干低いですが、金額/店の数値でもアイテムDの方が高くなっています。つまり、両アイテムの販売金額の差は販売店率によるものですが、数字の上では、アイテムCよりアイテムDの方が品揃えすればよく売れる、ということが言えます。

 

ここまで市場POSデータ分析の初級レベルを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?これまでの内容を理解できていれば、十分仕事で活用することができるレベルです。

 

 

次回は初級レベルの他の分析の切り口を紹介していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第9回 市場POSデータ分析:初級⑧

今回も販売の要因を分析する指標について、続きを見ていきましょう。

 

前回説明したように、販売金額を分解して要因を分析する3つのパターンのうち、「①販売金額=客数×客単価」は、店舗全体の売上を分析するための分解でした。アイテム別の販売金額を分析する際は、「②販売金額=販売店舗数×1店舗あたりの販売金額」と「③販売金額=販売数量×平均価格」を組み合わせた以下の分解を活用することが一般的です。

 

販売金額=販売店舗数×1店舗あたりの販売金額(1店舗あたりの販売数量×平均価格)

 

サンプル調査である市場POSデータでは、販売店舗数の数値自体に意味はないので、「販売店率」と割合で表示します。

以下のような状況の場合、アイテムAとアイテムBの販売金額の差はどこに要因があるでしょうか。

 

両アイテムの平均価格は同じで、数量/店(1店舗あたりの販売数量)はアイテムBの方が若干高くなっていますので、販売金額の差は販売店率(販売店舗数)の差によるものということがわかります。逆に言えば、アイテムBは店舗に品揃えすれば、アイテムAよりも若干売上が高まるため、販売店率を高めることで、アイテムAの販売金額を上回ることになります。

 

以下のような場合はどうでしょうか。

 

販売店率と平均価格は同じなので、販売金額の差は、数量/店の要因が大きいことがわかりますね。

 

 

一般的に販売店率は小売りへの営業力、数量/店は商品力を表しています。ただし、数量/店の数値は、商品力だけでなく、価格や販売促進によって変化しますので、注意してください。値引きしてエンド特売すれば、数量/店の数値が高まることはイメージできると思います。

 

 

次回は、実際のデータでこれらの指標を見ていきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第8回 市場POSデータ分析:初級⑦

今回から数回は、販売金額の要因を分析する指標である販売店率、1店舗あたりの販売数量、平均価格の説明をしていきます。

前提の知識として、小売における販売金額は、以下の要因に分解することができることを理解しておきましょう。

 

①販売金額=客数×客単価
②販売金額=販売店舗数×1店舗あたりの販売金額
③販売金額=販売数量×平均価格

 

①の客数×客単価の「客数」とは、ある店舗に来店したお客様の数、POSデータですので正確に表現すると、「レジを通過したお客様の数」です。来店したけど買い物をせずに帰ってしまったお客様の数は含まれません。「客単価」は、「顧客1人が1回の買い物で購入した金額の平均」です。

 

客数×客単価は小売店が常に意識していることですが、これは店舗全体の売上で分析する切り口です。アイテムAとアイテムBを比較する場合、それらのアイテムを置いている店舗の客数で比較するより、単純に置いている店舗数で比較する方がわかりやすいのは、以下の例でイメージできるでしょうか。

 

例)アイテムAはX店、Y店、Z店で販売している。アイテムBはX店のみで販売している。

よって、アイテムAの客数は、X店、Y店、Z店合計の3,300人、アイテムBの客数はX店の1,000人。

  1. 「アイテムAの客数は3,300人で、アイテムBの客数は1,000人」
  2. 「アイテムAは3店舗、アイテムBは1店舗で販売している」

2.の方がわかりやすいですよね。
イメージしやすい販売店舗数を表している指標が「販売店率」です。

 

 

次回は、販売店率を含めたPOSデータ分析でよく活用する分析方法を紹介していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS