市場POSデータ分析

分析講座 第20回 市場POSデータ分析:中級⑥

今回は、移動平均によるアウトプットをご紹介します。

新型コロナウイルスのまん延により、月次や週次のトレンドでデータを分析する機会が以前よりも増えています。ただし、月次や週次トレンド等では季節要因が入るため、以下の例のようにグラフ化しても、販売が伸びているのか落ちているのかよくわからないですね。

 

 

その際に使えるのが移動平均を使った指標です。移動平均とは期間合計の平均値を毎月(毎週)ずらしながら、計算していく方法です。

 

以下のアウトプットは12か月の移動平均です。一番左の2019年12月は2019年1月-12月計、一つ右の2020年1月は19年2月-20年1月計と、毎月合計期間をずらしていきます。そうすることで、季節要因の影響を除去できるため、市場のトレンドがわかりやすくなります。コロナ後から巣ごもり需要で伸び、その1年後の2021年から徐々に減少していることがわかりますね。
移動平均の合計期間は12か月にすることが多いですが、6か月合計など別の期間にしても問題ありません。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第19回 市場POSデータ分析:中級⑤

今回も1店舗あたりの平均扱いアイテム数について、見ていきましょう。
1店舗あたりの平均扱いアイテム数の公式は、「該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷100%」でしたね。

 

 

では、この指標を期間合計で計算する場合は、どうしたら良いでしょう?

期間合計で算出する場合も計算は簡単です。「期間別の該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷(100%×期間数)」で計算するだけで算出できます。

例えば、2022年3-8月のカレー・シチューカテゴリーの1店舗あたりの平均扱いアイテム数を月次データから計算するは、「2022年3月から8月の月別販売店率の合計÷600%(100%×6か月)」となります。

前年同期と比較したアウトプットイメージです。

 

 

カレールー・カレー粉が56.7から55.7アイテムの1アイテム減、調理済みカレーが94.6から93.1の1.5アイテム減が、合計の扱いアイテム数の減少につながっていることがわかります。

 

あまり知られていない指標ですが、いかがだったでしょうか。

次回は、中級編の最後として、別のデータ指標を紹介します。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第18回 市場POSデータ分析:中級④

前回ご紹介した、1店舗あたりの平均扱いアイテム数の計算方法の根拠を説明していきます。

 

今回は、「計算式の意味がわからないと気持ち悪い!」と思う方向けの説明ですので、指標を活用するだけであれば、「該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷100%」を覚えておけば大丈夫です。

では、以下の例で考えてみましょう。

 

 

店舗X・Y・Zともに2アイテム品揃えしていますので、1店舗あたりの平均扱いアイテム数は、2アイテムと計算しなくてもわかると思います。計算式にすると(店舗Z:2アイテム+店舗Y:2アイテム+店舗Z:2アイテム=6アイテム)÷3店舗=2となります。

 

この例のアイテムA・B・Cの販売店率を計算すると、アイテムAはX・Y・Zの3店舗で扱いがあるので100%、アイテムBはXの1店舗なので33.3%、アイテムCはY・Zの2店舗ですので66.7%ですね。

 

1店舗あたりの平均扱いアイテム数は公式にあてはめると、当然「2アイテム」になります。

(100%+33.3%+66.7%)÷100%=2.0

(3/3+1/3+2/3)÷3=2.0

 

公式の「該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷100%」の分子にあたる「販売店率の合計」というのは、表の「〇」の数を合計していることと同じで、分母にあたる「100%」は店舗数で割っているだけ、ということになります。
「ちょっとわからない。」という方も、あまり気にせず、公式に当てはめて、この指標を活用してみてください。

 

次回も1店舗あたりの平均扱いアイテム数について、応用的な使い方を紹介していきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第17回 市場POSデータ分析:中級③

今回は、1店舗あたりの平均扱いアイテム数という指標の説明をしていきます。

 

あまり知られていない指標ですが、市場POSデータで算出することができ、小売りへの棚割り提案にも活用できる指標です。1店舗あたりの平均扱いアイテム数は、名前のとおり、該当カテゴリーが小売り1店舗で平均何アイテム品揃えされているのかがわかる指標です。

 

 

上記から、2022年10月カレー・シチュー関連カテゴリーは1店舗あたり平均約170アイテムが品揃えされていますが、前年と比較すると約5アイテム減少しています。カテゴリー別に見ると、5アイテムの減少は調理済みカレーの影響であることがわかりますね。

 

では、1店舗あたりの平均扱いアイテム数の指標はどうやって計算するのかというと、下記で算出できます。

該当カテゴリー全体アイテムの販売店率の合計÷100% 

 

あるカテゴリーでは、3アイテムしか存在しておらず、それぞれのアイテムの販売店率が

アイテムA:100%、アイテムB:50%、アイテムC:50%

だとすると、(100%+50%+50%)÷100%=2.0で、平均扱いアイテム数は2アイテムということになります。

 

計算自体は、全アイテムの販売店率を合計すれば良いだけなので、比較的簡単に計算できると思いますが、なぜこの計算で扱いアイテム数がわかるのか疑問に思う方もいらっしゃると思いますので、次回はこの計算の仕組みについて、説明してきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第16回 市場POSデータ分析:中級②

前回は、PI値とは配荷店の販売力の要因をできるだけ除去したデータ指標であることを伝え、終了しましたので、その続きを説明していきます。

 

以下のような状況の場合、数量PI値はいくつになるでしょうか。

 

 

PI値は、販売÷客数×1,000で計算しますので、

アイテムA=500個÷5,000人×1,000=100

アイテムB=1,000個÷50,000人×1,000=20

となりますね。

 

 

客数の条件を1,000人で合わせることにより、小売りの販売力の影響を除いた数値を算出することができます。
この例であれば、アイテムBよりアイテムAの方が品揃えすればよく売れる商品である、と言うことができますね。

 

上記の例は少し極端でしたので、現実的には1店舗あたりの販売とPI値で大きく変わるケースは多くありません。ですので、「絶対に1店舗あたりの販売よりPI値を使った方が良い」とまでは言えません。むしろ、1店舗あたりの販売のほうが具体的にイメージしやすいので、この指標を使うのが一般的です。

 

小売店などで、PI値を求められた場合は、PI値の内容を理解したうえで利用しましょう。

 

次回は、別のデータ指標を紹介します。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第15回 市場POSデータ分析:中級①

今回から2回に分けて、PI値の紹介をしていきます。

PI値は小売店でよく使われているデータ指標ですので、利用している方は多いと思いますが、なぜPI値が分析に有効なデータ指標であるのかを理解している方は意外に少ないです。

 

まず、基本知識ですが、PI値とは客数1,000人あたりの販売で、金額ベースを金額PI値、数量ベースを数量PI値と言います。計算式は以下のとおりです。

金額PI値=販売金額÷客数×1,000

数量PI値=販売数量÷客数×1,000

 

PI値は、これまで紹介したデータ指標の中では、「1店舗あたりの販売」と同じ意味合いです。つまり、「商品を品揃えすれば、どれだけ売れるのか」を分析するためのデータ指標であり、商品力と販促力を示しています。

では、1店舗あたりの販売ではなく、なぜPI値を使うのでしょうか。PI値は、1店舗あたりの販売のデータ指標に含まれているあるバイアスを除去することができるのです。

以下の例を見てください。

 

1店あたり販売量を見ると、アイテムBが100個でアイテムAの50個より倍売れており、アイテムBの方が良く売れることになりますが、はたしてそうでしょうか。アイテムAは小型店で販売されているのに対し、アイテムBはGMSで販売されており、この2アイテムの売上の差は商品の力というより、小売店の販売力の差が要因として大きいと言えます。

1店あたりの販売のデータ指標には、配荷している小売店の販売力の要因が入ってしまっているのに対し、PI値は小売店の販売力の要因をできる限り除去したデータ指標であると言うことができます。

 

上記の例をPI値で見た場合、どのようになるのかは、次回見ていきましょう。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第14回 市場POSデータ分析:初級⑬

今回は、エリア分析について紹介します。

 

エリア分析は、基本的にメーカーやアイテムのエリア状況だけでなく、カテゴリー計と比較して、そのギャップを見つけることがポイントです。

 

エリアの県構成はデータにより異なり、自社の営業エリアの県構成と違うことがありますので、注意してください。

 

 

前年からの伸び率は、すべてのエリアでプラスとなっていますが、カテゴリー計では九州や北海道が高く、首都圏や東海、近畿の伸び率は相対的に小さくなっています。

 

カテゴリーのエリア別状況と自社のエリア別状況を比較し、自社として強化していくべきエリアはどこなのかなどを検討していくことがエリア別分析では大切です。今回の例では、メーカーAはカテゴリー計の伸び率よりすべてのエリアで伸び率が高くなっていますが、あえて挙げるのであれば、北関東はカテゴリー計の伸び率とほぼ同じなので、強化の余地がありそうですね。

 

ここまで、様々なPOSデータ分析を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

 

 

次回からは、中級編として、いくつかのデータ指標を紹介していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第13回 市場POSデータ分析:初級⑫

今回は、週次のトレンド分析について、前回とは違ったアウトプットを紹介していきます。

 

2022年に入っても新型コロナウイルスは終息していませんが、それに加えてロシアのウクライナ侵攻も影響し、原価高騰などにより多くの商品が値上げされています。

 

 

以下は、2022年3月から値上げされた商品の状況です。

 

 

2022年のように、ほとんどの商品が値上げされる状況では、値上げの影響で棚からカットされる可能性は低いため、見るべき指標を絞り込んだほうが、アウトプットは分かりやすくなります。

上記の商品は、3月からの値上げを発表していましたが、3月初週から徐々に平均価格が上がっていき、4月下旬にほとんどの店舗で価格改定が完了した様子がうかがえます。平均価格が上がっていく中でも、1店舗あたりの販売数量は同水準で推移しており、値上げによる販売減は起こっていません。少なくてもこの時点では、値上げによる販売への影響は見られないと言うことができるのではないでしょうか。

 

月次や週次でデータを見るとデータ量がどうしても多くなり、見る側からするとどこを見てよいのかわかりづらくなりますので、指標を絞り込んで、ポイントを見やすくする工夫も大切です。

ただし、今回の例は季節性がない商品でしたが、季節性のある商品であれば、前年比もチェックする必要がありますので、注意してください。

 

次回からは、違った切り口でのPOSデータ分析を紹介していきます。

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第12回 市場POSデータ分析:初級⑪

前回に引き続き、今回もトレンド分析の方法を紹介していきます。

 

前回は月次のトレンド分析でしたが、より細かな動きを見る場合は、週次でトレンドを見ていきます。特に新商品発売時は、販売の推移を見るだけでなく、以前に紹介した販売店率・1店あたりの販売個数・平均価格に分けることにより、課題が発見しやすくなります。

 

 

以下は、2022年2月に発売されたある新商品の推移です(2月7日週は一部店舗で先行販売)。

 

 

販売店率は発売週から70%を超え、4月には80%近くになり、順調に配荷が進んでいることがわかります。

1店あたり販売数量は発売週が80個近くになり、その週の平均価格が低くなっていることから、発売時に多くの店舗でプロモーションを実施したことが考えられます。平均価格は4月から下がってきていますが、週販(数量/店)は20~30個で安定しており、価格を下げても販売増にはつながっていないため、販売価格の設定が今後の課題と考えられます。

 

 

今回は新商品の1アイテムのみでPOSデータを見ましたが、競合商品と比較して分析するとさらに発見があります。

 

 

次回も週次のトレンド分析を紹介していきます。

 

 

データ出典:KSP-POS

分析講座 第11回 市場POSデータ分析:初級⑩

今回は、トレンド分析について見ていきます。

 

テレビCMなどの消費者プロモーションや価格改定、市場に影響を与える大きな出来事があった時は、大きく売上が変化することがありますので、その際は前期などとの比較だけでなく、時系列で見ていくとわかりやすくなります。

 

2020年から新型コロナウイルスのまん延により、3月から学校は休校となり、4月~5月は全国的に緊急事態宣言が発令されました。その結果として、外出の自粛により巣ごもり需要が増加したことは、皆さんご存じと思います。

 

以下は、味噌カテゴリーの月別販売金額推移です。

 

 

共働き世帯の増加とお湯に溶かすだけで作ることができる即席味噌汁の普及などにより、味噌市場は縮小傾向にありました。しかし、学校の休校が始まった2020年3月から前年比プラスに転じ、緊急事態宣言発令の4月は前年比110%となりました。

その後も9月以外は、前年比プラスで推移していることがわかります。(2019年10月から消費税が増税されました。食品は軽減税率の対象でしたが、増税前の9月はついで買いなどで前年比増となるカテゴリーが多く見られました)。

 

緊急事態宣言などの出来事はPOSデータではわかりませんので、自社の内部情報やネット検索で調べ、主な出来事は記載しておくと、わかりやすくなりますね。

 

 

データ出典:KSP-POS