9月1日は「防災の日」です。直近では7月28日に発生した熊本地震をはじめ、各地で豪雨災害などが発生しており、日頃からの備えや有事の供給体制への関心が高まっています。
本レポートでは、熊本地震発生時のKSP-POSデータを活用し、災害直後に消費者がどのような購買行動を取ったのかを分析・検証します。
【カテゴリー別販売金額前年比比較 熊本 vs. 全国】
地震発生の7月27日週において、熊本県内で特定カテゴリーの売上が大幅に増加。
・「水・火を使わずすぐに食べられる」食品への需要が集中
熊本県では、調理不要の「やきとりビン・缶詰」や「パックごはん」のほか、ライフラインの要となる「ミネラルウォーター」が急増。非常食・保存食としての緊急購買が顕著。
・断水や避難生活を見据えた「衛生・日用品」の急激な伸び
断水時の環境を乗り切るため、「制汗防臭剤」や「ウェットティッシュ」、「簡易食器」の需要が急増。また、情報収集や夜間の備えとして「電池」も大きく伸びており、避難生活に直結する商品の購買が伺える。
・災害報道を通じた全国的な「防災意識」の連動
熊本県のような極端な数値ではないものの、同じ7月27日週に全国データでも「防災商品」が前年比約1.7倍に増加。地震報道を受けた全国の消費者が、自身の備えを見直して備蓄行動を見直したことが確認できる。
・需要の急速なピークアウトと、一部商品の継続的な需要
多くのカテゴリーは7月27日の週をピークとし、翌週(8月3日〜)以降は急速に落ち着く傾向が見られた。一方で、「制汗防臭剤」などは翌週以降も高い伸びを維持しており、断水の長期化や夏の猛暑といった環境要因が、特定カテゴリーの需要を底上げし続けたと推測される。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、熊本/全国)
災害時の購買行動について「防災商品」「食品」「日用品」に分けて検証していきましょう。
まず、全国的に変動幅が大きかった「防災商品」の動向を確認してみましょう。
[防災商品 エリア別金額PIと前年比]
・2026年7月27日の週、防災商品の売上は全国で前年比約178%となったが、九州全体(約206%)だけでなく、四国エリア(約577%)や首都圏(275%)でも高い伸びを示しており、熊本での地震を機に、遠方地域でも備蓄への意識が急速に高まったことがわかる。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、エリア別)
[防災商品 四国/九州 県別金額PIと前年比]
・伸長率が高かった四国・九州を県別に見ると、特に四国の高知県で伸び率が高く、九州では被災地の熊本県で急激な伸びを記録したのを始め、長崎、宮崎、鹿児島で200~300%の伸びを示した。南海トラフへの警戒感が強い高知県民の地震災害への意識の高さが窺われる。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、県別)
[防災商品アイテムランキング]
・全国および熊本県のアイテムランキング1位は共通して「三立製菓 カンパン 160g」であり、手軽で日持ちするベーシックな非常食が備蓄の最優先に選ばれていることがわかる。
・熊本のランキングでは、1位のカンパンに加え、「長期備蓄用おかゆ」や「マフィン」「缶入クラッカー」など、水や火がなくても直ちにカロリー摂取できる保存食に需要が集中。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、熊本/全国)
次に、前年比の伸びが顕著だった「食品」と「日用品」のカテゴリーについて、四国・九州エリアの県別データを中心に確認してみましょう。
【食品】 : ミネラルウォーター/パックご飯/ラーメンカップ/やきとり(ビン缶詰)
・全品目で熊本県が圧倒的な伸びを示したほか、隣接する九州各県(特に宮崎・鹿児島・大分)へ強い波及効果が見られた。
・四国エリアでは愛媛県や高知県を中心に予防的備蓄行動が確認され、震源からの距離や警戒感によって影響の大きさに緩やかな差が見られた。
[ミネラルウォーター]
・飲用・生活用水の両面で命綱となる最優先品目。被災地に限らず九州全域や四国まで予防的備蓄買いが広がっており、地理的距離を超えて広域かつ大量に需要が波及。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、県別)
[パックご飯]
・常温保存が可能なパックご飯は簡便性が評価され、九州南部まで連動して伸びており、広域での備蓄・余震警戒の動きが見られる。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、県別)
[ラーメンカップ]
・お湯さえあれば完結できる簡便な温食主食。九州では宮崎・鹿児島で、四国では愛媛で前年比が高くなっている。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、県別)
[やきとり(ビン缶詰)]
・開けてすぐに食べられる「調理不要の高たんぱく食」として需要が集中。九州全域で大幅増。平時の売上規模が小さいため前年比の数値が高く出る傾向がある。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、県別)
・日用品は「停電(電池)」「断水・洗い物不可(簡易食器)」「入浴不可・清涼維持(制汗防臭剤)」といった、生活インフラ途絶と夏の環境ストレスを補う商品へ需要が集中。
[簡易食器]
・断水時の衛生対策として熊本で需要が跳ね上がった。熊本以外の九州では動かなかった一方で四国全域で大きく伸びた点は特徴的であり、南海トラフ地震等の潜在的な防災意識が高い四国地域において、地震報道を契機とした備蓄行動が引き起こされたと考えられる。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、県別)
[制汗防臭剤]
・断水による入浴困難を見越した「衛生・快適性維持」の緊急需要。7月末という「夏場の猛暑期」の被災であったため、季節要因と災害要因が掛け合わさり、広範囲で前年比を押し上げる要因となった。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、県別)
[電池]
・停電対策や懐中電灯・ラジオ等の情報・照明インフラ確保を目的とした購買。被災地に限らず、周辺地域でも確実な買増しが発生した。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット、週次、県別)
★★★★★
今回の熊本地震直後の購買は「即食・無調理」「インフラ途絶」「夏の環境ストレス」対応品目へ集中することが実証されました。また、影響は被災地に限らず、潜在的な防災意識が高い地域(四国など)へも広域に誘発・顕在化することがわかりました。
自然災害はいつ発生するか予測がつきません。私たち個人も日頃から「何が必要か」を考え、家庭での備蓄を推し進めていく重要性を改めて示しています。











