【2023年9-11月速報】食品全体の価格上昇率は5.7%。商品の8割は値上げが続く。値上げ商品の約60%は数量ダウン。特に冷凍食品は厳しい状況。

前回は、2023年上期(1月~6月)データで値上げの状況をご報告いたしました。
今回は、2023年9月~11月の速報データから最新の値上げ実態と販売の変化を見ていきます。

KSP-POSとは、株式会社KSP-SPが提供する食品スーパーマーケットの市場POSデータです。
店頭での値上げの実態、値上げ後の販売状況などが月次データ、週次データで確認いただけます。詳細はこちら→

2023年9月~11月は食品全体で5.7%の価格上昇率となった。2023年上期の6.4%と比較すると0.7ポイント低下し、値上げ水準は若干落ち着いたように見える

分類別に見ると、酒類の2.8%が目立つ(前期から5ポイント低下)。菓子類・飲料は0.5ポイント、加工食品は0.2ポイントの低下にとどまり、上昇率は高まっていないものの引き続き高水準で推移していることがわかる。
*特に記載がない限り:上期(3月~8月)、下期(9月~2月)
*本レポートでは、食品を約230分類に区分したKSP標準分類を利用。食品を約800分類に区分した詳細分類の問合せはこちら→。

出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)

 

2022年3月以降の月次平均価格上昇率推移から、直近の上昇率低下がわかる。加工食品、菓子類、飲料の2023年11月は約6%。

  • 加工食品・菓子類:値上げ率はほぼ一定ペースで上昇。2023年8月の上昇率8%弱をピークに低下傾向。
  • 飲料:2022年10月から値上げ基調となり、2023年8月~9月の10%弱をピークに低下傾向。
  • 酒類:値上げは2023年春頃がピーク。2022年10月一斉値上げ前の買いだめ(2023年9月)、2023年10月酒税改正前の買い控え(2023年9月)など、値上げ以外の要因で極端な値が見られる。

出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)

 

次に、値上げ率の高い分類を見てみる。
まずは、売場の区分に近い単位(以下、小分類)の平均価格上昇率上位は下記の通り。(主要小分類)

加工食品缶詰、冷凍食品、乳製品が2桁上昇。缶詰は2023年2月以降、冷凍食品は3月以降2桁上昇が続く。
菓子類デザート・ヨーグルトのみ2桁上昇。2023年5月以降は2桁上昇となり、11月は108%台。
飲料乳飲料のみ2桁上昇。2023年8月以降2桁上昇が続く。

出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)

 

小分類を値上げと数量の前期比で分類を分布すると下記の通り。
平均価格が2桁上昇した小分類の内、乳飲料は数量前期比99.2%で前年同等となったが、乳飲料以外の販売数量前期比は大幅ダウン。特に、冷凍食品の販売数量前期比は89.3%。平均価格上昇分を相殺し、販売金額前期比もマイナスとなる厳しさとなった。

その他着目点としては、下記2点。
・アイスクリーム類のみ販売数量前期比プラス(気温の高い日が多かったためと推測される)。
・値上げの代表格として取り上げられた食用油の平均価格上昇率は1.8%にとどまるが、販売数量は92.3%と厳しい状況が続いている。

出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)

 

小分類に続いて、より区分された細分類の状況を見てみる。
細分類の平均価格上昇率上位は下記の通り。(主要細分類)

加工食品:約140分類の内、約23%に当たる33分類が2桁の上昇率。これは2023年上期(1月~6月)と同値。れん乳、クリーミングパウダーは20%前後の大幅値上げ。上位分類の顔ぶれから、分類の売上大小問わず大幅値上げが広がっている状況がわかる。
菓子類:上位5分類は2桁上昇。プレミアムアイス、畜産珍味が上昇率トップ。その他珍味以下も近い値。
飲料:上位5分類は2桁上昇。特に、果汁100%飲料の上昇率が高い。
酒類:他より上昇率が低い。その他雑種、リキュール類は酒税改正の影響。

出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)

 

値上げと数量の前期比で分類を分布すると、80%の分類は平均価格上昇&販売数量マイナス。2023年上期(1月~6月)の87%と比較すると、7ポイント減少。一方、販売数量プラスの分類は17%で、2023年上期から7ポイント上昇。
食品全体として販売数量が厳しい状況は変わらないが、分類によっては回復が見られる。

出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)

 

アイテム別の平均価格上昇率を見てみる。4分類とも約80%の商品が値上げされている。
値上げされた商品の値上げ率の内訳は、3%未満が最も高く、次いで7%以上または10%以上。傾向は2023年上期から変動なし。
加工食品・菓子類は40%前後、飲料は46%、酒類は31%の商品で上昇率2桁となり、厳しい値上げが続いていることがわかる。
また、値上げ商品の約60%は数量ダウンとなった。

 

最後に、平均価格上昇率が高く(11.1%)、販売数量前期比が最も低かった(89.3%)「冷凍食品」にフォーカスする。

販売金額、数量、平均価格の前期比推移をみると、平均価格の上昇と数量の下降が進んでいることがわかる。価格上昇要因の買い控えの他に、大容量品への移行も要因として推測される。
ただし、2023年10月・11月は販売金額が前年割れとなっており、コロナ禍で伸長した代表的なカテゴリーで、改装や新店では売場面積が拡大した店舗も多いことを鑑みると、数値以上のインパクトがあるかもしれない

出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)

 

冷凍食品の主要細分類でプラス推移は見られないが、金額構成比45%を占める(2023年9月~11月)「冷凍調理」の不調が、冷凍食品全体に大きな影響を与えている。「冷凍調理」は餃子、唐揚げ、ハンバーグなどを含む分類。
「冷凍調理」は2022年8月以降、数量前期比マイナスが続く。特に、2023年5月以降は前期比80%台で、金額前期比は95%前後。この傾向が転換しない限り、冷凍食品の厳しい状況は続くと推測される。

出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)

 

 

2023年9月~11月のPOSデータから、価格の上昇率は頭打ちと見られるが、高止まりしており、明確に下がったと言える状況ではない。
値上げ報道の減少、心理的な値上げ慣れなどから、生活者は値上げに鈍感になっているとも思えるが、販売数量が回復しないことから、節制生活が日常化していると推測される。
多くの食品メーカー様から「これだけ長く数量が回復しないのは、過去の値上げと状況が異なりこの先が読めない」という声も聞く。不安定な社会情勢や世界的な異常気象、天候不順もあり、今後を予測することは難しいが、その分いち早い現状把握がより重要ではないだろうか。

今後も、KSP-POSを使った最新情報を報告していく。

 

 

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