今回は最新の値上げ実態を、2025年上期(1月~6月)の食品スーパーマーケットのPOSデータをもとにご報告します。
KSP-POSとは、株式会社KSP-SPが提供する食品スーパーマーケットの市場POSデータです。
店頭での値上げの実態、値上げ後の販売状況などが月次データ、週次データで確認いただけます。詳細はこちら→
2025年上期(2023年1月~6月)は食品全体で5.2%の価格上昇率となった。(図1)
これは23年に近づく上昇率で、前年を大きく上回っている。
2023年上期・下期とも6.0%超。2024年は上期4.3%、下期3.0%でピークを脱したと思われたが、2025年上期に再上昇。特に、加工食品の上昇率が高い(25年上期6.4%)。
*特に記載がない限り:上期(1月~6月)、下期(7月~12月)
*本レポートでは、食品を約230分類に区分したKSP標準分類を利用。食品を約800分類に区分した詳細分類の問合せはこちら→。
図1:食品全体の平均価格上昇率は再上昇。22年上期比で116%。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
図2:25年上期は加工食品の価格上昇率が特に高い(6.4%)。加工食品、菓子類、飲料は、22年上期比で2桁の上昇率で推移。
- 加工食品:23年下期(6.4%)をピークに、上昇率は下降していたが、25年上期再上昇。上昇率はピークの23年下期に並ぶ(6.4%)。
- 菓子類:価格上昇率は落ち着いているが、平均価格は右肩上がり。
- 飲料:価格上昇は継続し、25年上期は上昇率は5.0%。
- 酒類:2023年10月酒税法改正等もあり、動向は他と異なるが、22年上期で109%上昇。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
図3:2024年上期は値上げのペースが減速していると報告したが、24年下期後半から再び上昇に転換。
- 加工食品:2025年4月以降、8%に近い上昇率で推移。
- 飲料:2023年の10%近い上昇率から低下しているが、24年以降も高い上昇率を維持。
- 菓子類:24年下期までは加工食品と同様の動きだったが、25年上期の上昇率は4~5%で推移。
- 酒類:2024年4月以降マイナスに転じていたが、25年上期プラスに転換。(ビール各社4月に一斉値上げ)
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
図4:加工食品、菓子類、飲料では、約4割の商品が平均価格で3%以上値上げ。
次に、平均価格が上昇した商品の割合を見る。
酒類を除く3分類は、4割の商品が平均価格3%以上上昇。10%以上上昇した商品が2割から2割弱あり、全体的な値上げ基調は変わっていないといえる(点線は、2024年上期累積構成比)。
値上げされた商品の内、6割以上の商品が販売数量の前年同期比マイナス。値上げによる生活者の節約志向が窺える。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
図5:25年上期 最も価格が上昇したのは米の75.9%。備蓄米放出もあり6月の上昇率は60%台に低下。
次に、値上げ率が高い分類を見る。2025年上期に、平均価格上昇率が高かった分類は以下の通り。
加工食品:米カテゴリー全体の平均価格上昇率は75.9%に達している。
菓子類:2桁上昇はチョコレートのみで、玩具菓子、ガムが続く。
飲料:嗜好飲料の中国茶、レギュラーコーヒー、ココアと続く。
酒類:果実酒、ビール、スピリッツと続くか、上昇率は低い。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
図6:約7割の分類は、平均価格上昇&販売数量マイナス。
次に、値上げと数量の前期比で分類を分布した。下図を見ると、値上げされている分類の多さがわかる。
- 平均価格上昇&販売数量マイナス(右下)が70%→代表)チョコレート
- 平均価格は上昇したものの、数量がプラスとなった分類(右上)も16%ある→代表)魚肉ソーセージ、トマトジュース
- 平均価格が下がった分類が約13%(左上、左下)。しかし、数量がマイナスとなった分類もある(左下)
*赤字は後ほど詳細を分析。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
最後に、特徴的な傾向が見られた分類をピックアップして、詳細を分析。
「トマトジュース」
- 23年下期以降、平均価格は上昇しているが、販売数量も前期比プラスを継続中のアップトレンドカテゴリー。
25年上期:平均価格上昇率4%/数量前期比109%/金額前期比113% - 好調の理由として、以下の点が推測される。
①美容・健康効果の再評価
②生鮮トマトの高騰による代替購入
③トマト缶詰高騰による代替購入(調理利用)
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
「魚肉ソーセージ」
- 24年下期以降、平均価格の上昇率が落ち着いてから販売数量はプラスに転じた。
25年上期:平均価格上昇率2%/数量前期比111%/金額前期比113% - 好調の理由として、以下の点が推測される。
①価格上昇率が他分類より低いため、相対的に買いやすい価格で節約志向にマッチ
②高たんぱくで健康志向面が評価
③常温で長期保存でき、そのまま食べてもいいし、幅広いレシピに応用できる
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
「チョコレート」
- 23年上期以降、平均価格の上昇率は5%以上で推移し、販売数量はマイナスが続く。
特に、25年上期は価格上昇&数量低下が顕著。
25年上期:平均価格上昇率15%/数量前期比89%/金額前期比102%
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
■大袋で売上1位「明治 チョコレート効果カカオ72% 大袋 225g」
- 平均価格 22年上期 542円 → 25年上期 943円 22年上期比 173%(+400円)
- 販売数量(前期比) 25年上期 74%
大袋チョコレートが税込み1000円を超えると、さすがに手が伸びなくなることは容易に想像できる。
代替品を探すまたは購入頻度を抑えるようになるのではないだろうか。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
■板チョコと言えば「ロッテ ガーナミルク 50g」
- 平均価格 22年上期 87円 → 25年上期 131円 22年上期比 151%(+44円)
- 販売数量(前期比) 25年上期 100%
板チョコが100円で買えたのは昔話になりつつある。
それでも、23年上期以降、販売数量は大きく落としていない。
他チョコレート商品も大幅に値上がりしている中、美味しさと価格の面から板チョコへ原点回帰か。
出典:KSP-POS(食品スーパーマーケット)
既に、7月に値上げされる商品は昨年の約5倍という報道もある。原料高、値上げ要因は一層複合化し、今後も値上げ傾向は続くと推測される。ただし、平均価格上昇の要因はカテゴリーによって異なるため、今後も、KSP-POSを使った最新情報を報告していく。
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